ここでしか味わえないもの【晴】2005年09月18日

 相変わらず休みの無い生活が続いていた中、今日は久し振りに7時くらいで切り上げることができた。
 長いトンネルの出口の小さな光が、ようやく見えたような感じだ。
 明日も仕事なので真っ直ぐ帰るべきところだったのかもしれないが、少し寄り道をした。

 僕の好きな散歩コースが都内にある。
 有楽町線の東池袋、もしくは都電の東池袋4丁目で下車して、しばらく行くと、日の出商店街という小さな商店街がある。
 その日の出商店街を経由し、大塚まで出る。大塚の三業通りを通って、巣鴨駅方面へ抜ける。
 余力が有れば山の手線沿いに駒込・田端まで行く。
 或いは巣鴨から中山道を下って板橋方面へ抜ける、といった、山の手北部を歩くコースである。

 有楽町線で東池袋で降りた。
 ウォークマンで好きな音楽を聴きながら改札を抜けた辺りから、これから好きな場所を久し振りに歩けるという開放感、嬉しさなのか、既にウルウルきてしまっていた。
 ここ2週間くらい、ずっと抑圧していたものが、ドッとはじけてしまったようだ。
 地下から地上へ出ると、外はクリアな夜空に月が明るく輝いていた。

 大塚あたりは、何の変哲も無い、東京の極平凡な街である。いや、むしろ見方によってはうら寂しい薄汚れた印象すらあるかもしれない。
 いかがわしいネオン、盛り場に散乱するゴミ、町を徘徊する酔っぱらい・・・。
 普通なら僕の逆鱗に触れるような品の無い情景。

 ところが、大塚では、そんな夜の街の情景が、僕の目には、何の障害も無く飛び込んでくるのである。
 それどころか、僕の自由を祝福してくれるかのような楽しげな気分を醸し出している。
 それもそのはず、今日は近くの天祖神社で祭りがあったようだ。
 又、僕は何か呼ばれたのだろうか・・・?。
 僕の中で、バラバラになっていたパズルのピースが自ずから組合わさっていくかのようなイメージが浮かんでくる。

 大塚という街は、僕が学生時代に住んでいた街で、大変馴染みのある街なのである。
 そんな親近感が、僕をして、良くこの地域に足を向かわせる。
 この開放感の下、歩く僕の好きな平凡な街は、いつ来ても、ただただ懐かしく優しく僕を包み込んでくれる。

 少し好きな場所を歩いたことで、今まで硬化しかけていた気分が、どうにかリフレッシュされたようだ。
 それにしても今日歩き始めた時の、言い知れないあの感動は、どうしたことだったんだろうか?。
 仕事で自分を殺していたことが、逆に感受性を育んでいたのかもしれない。
 そう考えると、不毛に思えていた仕事も、体験した意義はあるのかもしれないな。

 只・・・、今日はこれで又、僕は自由と音楽が更に一層、好きになってしまった。