ふと佐原へ2011年08月16日

お盆休みの時期は毎年大抵は帰省している。
今年は経費節減の為、帰省は断念した。
変わりに日帰りで、普段行かない東京近郊の場所に行ってみよう、とふと思い立ち、千葉県の佐原(さわら)という所に行って来た。
北総の小江戸と呼ばれ、たまに古い町並みがテレビなど紹介されたりしている街で、日本地図(大日本沿海輿地全図)の伊能忠敬の縁の地でもある。

行きには千葉交通の高速バスを使った。
浜松町駅から出ており銚子まで行ける路線である。
料金は佐原駅北口まで1700円。
予約は不要で料金後払い、ということで、手軽に乗れていつも空いているのかな、と思った。
確かに浜松町を出たときはガラガラだったが、高速に乗る手前のもう一つの停留所である、東京駅前から一気に人が乗ってきて、ほぼ満席状態になった。浜松町から乗って正解であった。
最初箱崎辺りが渋滞気味ではあったものの、それを過ぎると快調になり、ほぼ予定通り佐原駅北口に到着。

行き当たりばったりな感じで来てしまったので、とりあえず駅で何らかの情報を得ることにする。
観光案内所のような所があったので、パンフレットを探していると、そこのオジサンが声をかけてくれた。
市街の便利マップみたいなのが有料であるというので30円で購入。
ちなみに、その30円はマップに載っている市内の食堂に行った時に、マップを見せると30円割引になり、実質キャッシュバックできるシステムになっている。
ちなみに後でもう一度述べるが、敢えて僕はキャッシュバックしなかった(笑)。

オジサンにしばし説明を聞き、道などを教えて貰う。
オジサンに写真見せてもらい教えて貰ってわかったことで、実は市内の伊能忠敬の旧宅など文化財を含め市内にある古い町並みが、先の東日本大震災によって被災してしまい、屋根などが崩れ落ちたりしてしまったものがあるそうだ。
文化財は国の所有なので、手続き等の関係で修理が遅れ、最近ようやく着手できたようだ。
他にも川自体が隆起したり、液状化があったり、今回大震災の爪痕が、こんな所まで!、と切ない思いになった。

街のいたる所には「復興」の文字が書かれたポスターがあり、そこには「観光客の皆さんが訪れてくれるだけで癒しになります」といった地元の方々の切なる願いが書かれていた。

僕はメインストリートでもある小野川沿いの古い町並みを歩き、そして、裏道をグルグルと散策して回った。
小野川に観光客を乗せた船が通る。水郷巡りもできるようだ。
街の印象は、僕の行ったところで言うと、津和野、もしくは川のある感じは九州の柳川に雰囲気は似ている気はする。
ちっちゃい津和野、ちっちゃい柳川、というところであろうか。
至る所に文豪の碑などがあって、文化人にも愛されていた街であるようだ。
伊能忠敬の旧宅は前述のとおりに修復中で、すぐ正面にある記念館も月曜で休館日であった(笑)。

ちなみに伊能忠敬は50歳になってから測量術を学び、56歳から全国測量の旅に出る。
50過ぎてからの人生の方が、その後に大きくクローズアップされている。
僕も来年50を迎えるので、伊能師匠・伊能兄さんのガッツにあやかりたいもんだ(笑)。
ちなみに、この佐原は伊能忠敬の故郷では無く、忠敬が18歳の時に婿養子に入った伊能家が存する街であるらしい。マスオさん目線で言うと、磯野家がある桜新町、ということになろうか(笑)。

メインストリートを一回りした後、マップにも載っていた「東洋軒」という洋食店で昼食をとることにした。大正25年創業の老舗だそうだ。
見知らぬ街の古い食堂などに一人で飛び込みで入るのは、ちょっと勇気がいるものだ。
こういう時はテレビ東京でやってる「モヤモヤさまぁ〜ず2」のさまぁ〜ずのノリを思い出しながら、モヤモヤ好奇心前面で突入する。

入ってみると、まだ僕以外は老夫婦の客が一組で、混んではいなかった。
ただ店員が出てこない。まさにモヤっている(笑)。
5分くらいしたらようやく厨房に人影が見えたので声をかけて、ランチと一人打ち上げ用の生ビールを注文した。
ランチは新鮮なお新香がついて、メインは一口カツエビフライ、唐揚げなどの揚げ物にミニハンバーグと出汁巻き卵、サラダがつく。
ちなみに全品にコーヒー付き。
揚げ物はオイシイのは勿論のこと、お新香などがちゃんとしていて老舗感があり満足であった。
900円+生ビール500円で1400円。

「東洋軒」もマップに記載されているので30円割引が出来たのであるが、実はこの店、外からみたときに、屋根にビニールシートがかかっているのが見えた。震災で屋根が破損したらしい。
少しでも復興支援にと、敢えてマップ割引はしないでおいた。

それなのに(笑)、お勘定を払う時に、最初900円、とこちらの想定外の料金を言われ、思わず聞き返してしまった。生ビールを勘定に入れるのを忘れていたようだ。せっかくこっちが割引不要にしてやってるのに、お人好しすぎるやろっ!!、とツッコミたいところであったが、勿論1400円全額を支払って店を出た。

その後、もう一回り街を巡って、一応復興支援の為にと地酒も購入しておいた。
実は最近酒は控えているので、今日はビールも飲んでしまって酒酒と健康維持に反する流れになってしまった。
でもここは復興支援の方が大切!、という大義名分がある(笑)。
ともあれやはり、その地元に何らかのお金を落としていくのが、一番支援にはなるようだ。

正直な感想を言うと、街自体は実際のところは震災前から既に衰退の傾向があったように見受ける。
こうした街に特徴なのは、若者の姿や若者の集まる場所が余り見受けられない、ということだ。
古い街だと若者が安心していられる場所が少なく、若者が寄りつかなくなる傾向になりがちである。
ただ若者が集まるような施設を作ると、今度は風紀が乱れたり、文化施設と相容れない、などの問題が起こる。理想的な共存は難しい所だ。
こういう点は、京都、鎌倉などの街や、僕の住んでる近くの老人の原宿巣鴨などの街を見習って、佐原にも復興してもらいたいもんだ。

帰りはルートを変えて電車で帰ってきた。
佐原から成田まではJRで、空いていたし、景色は結構広々とした田園地帯をのんびり走っていく感じで非常に良かった。
この辺は小さい山が多く千葉の特徴的な景色だと思えるが、古代の東京も、こんな感じだったのでは無いだろうか?、とふとそんな思いがよぎった。

その後は、そのままJRで常磐線に入るというルートもあって非常に迷ったが、特急に乗るため成田からは京成線にシフトした。
成田空港からの帰省客で混雑の懸念があったものの、思ったより混まずに1時間程で無事日暮里に到着することができた。

やはり近郊でも普段訪れない地を訪れるのは精神的にも良いものだ。
帰宅後も、すっかり千葉感・佐原感に満たされていた休日であった。